登録支援機関なしで特定技能を自社支援する方法とは?要件・メリット・注意点を分かりやすく解説

特定技能外国人を受け入れる企業には、支援業務を登録支援機関に委託するか、自社で直接行う「自社支援」を選ぶか、2つの選択肢があります。自社支援を選べば月2〜3万円(1人あたり)の委託費をゼロにできますが、法令で定められた10項目の義務的支援を自社の体制で対応しなければなりません。

自社支援の要件・メリット・デメリット・切り替え手順を整理しました。どちらが自社に合うかを判断する参考にしてください。

目次
武藤 拓矢

監修者

武藤 拓矢

合同会社エドミール 代表社員

2018年から外国人人材領域に携わり、技能実習・特定技能制度で累計600名超の外国人人材の採用から定着までを支援しています。

資格
申請等取次者、外国人雇用管理主任者
監修者プロフィールを見る

自社支援とは|登録支援機関なしで企業が直接行う外国人支援

自社支援とは、特定技能所属機関(外国人を雇用する企業)が、登録支援機関に委託せず自社の人員で支援業務を担う方式です。

特定技能1号の在留資格で働く外国人には、法令上10項目の「義務的支援」を提供しなければなりません。この業務を外部機関に任せず、自社で完結させる選択肢が自社支援です。

登録支援機関への委託は法律上の義務ではありません。一定の要件を満たせば、企業は自社支援を選べます。

登録支援機関と自社支援の比較|費用・負担・柔軟性の違い

どちらを選ぶかは、費用・実務負担・柔軟性の違いを踏まえて判断します。

比較項目登録支援機関に委託自社支援
費用月2〜3万円/人(委託料)委託料ゼロ(内部コストは発生)
実務負担機関が対応(社内は管理のみ)全業務を社内で対応
言語対応機関が多言語で対応自社で外国語対応
トラブル時機関が一次対応(スピードに遅れあり)社内で即時対応できる
法令遵守リスク機関が責任を持って管理企業が全責任を負う
導入ハードル委託契約のみで開始可体制整備・要件確認が必要

登録支援機関に任せれば手間は減りますが、委託コストがかかります。自社支援はコストを削減できる分、社内体制の整備と継続的な運用が必要になります。

自社支援の要件|企業が満たすべき3つの条件

自社支援を行うには、出入国在留管理庁が定める3つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 実績要件:過去2年以内に就労資格を持つ外国人(中長期在留者)を雇用・管理した実績があること。技能実習生の受け入れ実績も対象になる場合があります。
  2. 支援体制の要件:義務的支援の全10項目を、自社の人員と環境で実施できる体制を整えていること。
  3. 言語対応の要件:外国人材が十分に理解できる言語(母国語または通じる外国語)で支援を実施できること。

企業が欠格事由(過去5年以内の入管法違反など)に該当する場合は、上記の要件を満たしていても自社支援は認められません。事前に管轄の出入国在留管理局へ確認してください。

支援責任者・支援担当者の選任と要件

自社支援を行う企業は、社内から「支援責任者」と「支援担当者」を選任しなければなりません。

支援責任者に求められる要件

  • 企業の役員または職員であること
  • 過去5年以内に外国人の生活相談業務に2年以上従事した経験があること(または同等の知識・経験)
  • 支援担当者を監督できる立場にあること
  • 外国人材と直接雇用関係にある部署ではなく、中立な立場から関われること(義務ではないが望ましい)

支援担当者に求められる要件

  • 企業の役員または職員であること
  • 中立な立場で外国人材に関われる役職であること

支援責任者と支援担当者の兼任は可能です。ただし、外国人材を直接指導・評価する立場の人物を選ぶと支援業務の公正性が損なわれるため、避けてください。

義務的支援10項目|自社支援で対応が必要な具体的内容

特定技能1号の外国人材には、法令で定められた次の10項目の支援を義務として提供しなければなりません。自社支援の場合、これらをすべて自社の体制で実施します。

  1. 事前ガイダンス(入国前の労働条件・生活情報の説明)
  2. 出入国する際の送迎
  3. 適切な住居の確保・生活に必要な契約支援
  4. 生活オリエンテーション(銀行・医療・交通などの案内)
  5. 公的手続き等への同行(役所・銀行の手続きなど)
  6. 日本語学習の機会の提供
  7. 相談・苦情への対応(外国語対応できる窓口の設置)
  8. 日本人との交流促進
  9. 転職支援(人員整理等の場合)
  10. 定期的な面談・行政機関への通報(3か月に1回以上)

2025年4月の制度改正で、定期報告の提出頻度が四半期ごとから年1回に変わりました(初回提出期間は2026年4月1日〜5月31日)。定期面談(3か月に1回以上)と随時報告(事由発生から14日以内)の頻度は変わっていません。

自社支援のメリット

委託費用の削減

月次の委託料(1人あたり月2〜3万円)がゼロになります。10人雇用していれば年間240〜360万円の削減です。その分を外国人材の研修費や待遇改善に回す企業も増えています。

外国人材との直接コミュニケーション

社内の担当者が相談に直接対応するため、問題を早期に把握しやすくなります。機関を通したタイムラグがなく、何かあったときに素早く動けます。

企業独自の支援体制を作れる

自社の方針や外国人材の出身国・状況に合わせて、支援内容を柔軟に設計できます。標準的な委託支援では対応しきれないケアも、自社支援なら工夫次第で対応できます。

自社支援のデメリット・運用上の注意点

社内リソースの継続的な確保が必要

外国語対応・定期面談・公的手続きへの同行など、支援業務の実務は工数がかかります。担当者が異動・退職したときの引き継ぎ体制も事前に整えておかないと、業務が滞るリスクがあります。

法令違反の責任を自社が全て負う

支援計画の未実施や届出漏れが発覚した場合、在留資格取消・改善命令・行政処分の対象になる可能性があります。登録支援機関に委託していれば機関が管理しますが、自社支援では企業が全責任を負います。

多言語対応のハードルが高い

外国人材が理解できる言語での対応が義務づけられています。英語であれば対応できる社員がいても、ベトナム語・タガログ語・インドネシア語に対応できる人材を確保するのは多くの企業で難しいのが現実です。

入管手続きの専門知識が求められる

在留資格の更新申請・随時報告・変更届出など、入管関連の事務手続きは専門知識を要します。書類作成は行政書士に依頼できますが、面談・同行などの義務的支援の実務は自社で担う必要があります。

切り替え手順と必要書類|登録支援機関から自社支援へ変更する方法

現在登録支援機関に委託している企業が自社支援へ切り替える場合、以下の手順で進めます。

ステップ1:登録支援機関との契約終了日を調整する

委託契約の終了日と自社支援の開始日が連続するよう日程を調整します。空白期間が生じると支援が途絶えた状態になるため、引き継ぎのスケジュールは丁寧に確認してください。

ステップ2:新たな支援計画書を作成する

自社支援用の新しい支援計画書(参考様式第1-17)を作成します。支援内容の実施予定日・担当者・実施方法を記載します。

ステップ3:管轄の出入国在留管理局へ届出を提出する

変更日から14日以内に、以下の書類を管轄局へ提出します。

  • 支援計画の変更に係る届出書
  • 新しい支援計画書(参考様式第1-17)
  • 特定技能所属機関による支援委託契約に係る届出(委託解除の届出)

行政書士への依頼はビザ申請や届出書の作成代行に限られます。面談・同行・相談対応などの義務的支援の実務は自社で担う必要があります。

向いている企業・向いていない企業のチェックリスト

自社支援が自社に合っているかを以下の項目で確認してください。

自社支援に向いている企業

  • 過去2年以内に外国人材の雇用・管理実績がある
  • 外国語(英語・ベトナム語等)に対応できる社員が社内にいる
  • 支援担当者をメインで担える人員を確保できる
  • 入管手続きに精通した担当者がいるか、行政書士と連携できる
  • 10人以上の特定技能外国人を雇用しており、委託費削減の効果が大きい

自社支援に向いていない企業

  • 外国人材の受け入れが初めてで、管理実績がない
  • 外国語対応できる社員がいない
  • 担当者の工数を確保できない(兼任が重くなる)
  • 入管手続きに不安がある
  • 雇用人数が少なく、委託費削減のメリットが限定的

登録支援機関を選ぶポイント|自社支援が難しい場合の次の一手

自社支援の要件を満たせない、または体制整備が難しいと感じたら、登録支援機関への委託が現実的です。

機関を選ぶ際に確認すべき主なポイントは以下のとおりです。

  • 対応言語(外国人材の母国語に対応しているか)
  • 対応分野・業種(製造・介護・外食など専門実績があるか)
  • 費用の透明性(月次委託料・初期費用・オプション料金の内訳)
  • 担当者の専門性・実績(行政書士との連携、入管対応経験)
  • 緊急時の対応体制(24時間・休日対応の有無)

登録支援機関の詳細な比較と選び方については、登録支援機関おすすめランキング25選【選び方・費用相場まとめ】で解説しています。費用・言語・対応分野から自社の条件に合う機関を比較できます。

よくある質問

Q. 登録支援機関なしで自社支援することは法律上問題ありませんか?

A. 問題ありません。特定技能制度では、登録支援機関への委託は義務ではなく選択肢です。実績要件・支援体制・言語対応の3要件を満たせば、登録支援機関なしで自社支援を行えます。

Q. 自社支援に切り替えた後、また登録支援機関に戻すことはできますか?

A. できます。委託に戻す場合も、変更日から14日以内に届出が必要です。切り替え回数に制限はありませんが、そのたびに書類作成と提出が発生します。

Q. 技能実習生の受け入れ実績は自社支援の実績要件として使えますか?

A. 就労資格を持つ外国人の雇用・管理実績として認められる場合があります。管轄の出入国在留管理局に確認してください。

Q. 自社支援でも行政書士に依頼できる業務はありますか?

A. ビザ申請・在留資格更新・届出書の作成代行は行政書士に依頼できます。ただし、面談・同行・相談対応などの義務的支援の実務は自社でやる必要があります。

まとめ

自社支援の最大のメリットはコスト削減です。月2〜3万円×人数分の委託費がゼロになるのは、特定技能外国人を多く雇用している企業にとってはっきりとしたメリットです。外国人材との直接的な関係構築という面でも、機関を介さない分、現場の実態を掴みやすくなります。

ただし、当サイトの監修者(元登録支援機関スタッフ)の経験から言うと、外国語対応や入管事務の負担を甘く見て自社支援に切り替えた後、運用が立ち行かなくなるケースは少なくありません。雇用人数が少ない企業・外国語対応できる社員がいない企業・担当者の工数が取れない企業は、まず登録支援機関を活用した方が長期的には安定します。自社の体制を冷静に見た上で判断してください。

登録支援機関くらべナビ

執筆者

登録支援機関くらべナビ

元登録支援機関での実務経験をもとに、外国人支援や企業対応の現場で見聞きした内容を踏まえ、登録支援機関に関する情報をお伝えしています。制度の特徴や支援内容の傾向、選定時の参考となる視点などを、できる限りわかりやすく解説しています。

登録支援機関くらべナビとは